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佐川アトリエの基本コンセプト
佐川アトリエの設計するエコ住宅は
地域の特性、日照、採光、通風、日射遮蔽などの自然を利用した高度な建築的パッシブ手法で夏冬の冷暖房にかかるエネルギーを自給できる住宅(ゼロエネルギー住宅)を提案いたしております。

CASBEE-I N邸新築 SDGs で評価

狭小敷地・準防火地域内に建つ木造3F建


数年辺りから世はSDGsという言語が様々な事柄に利用されて久しい。1997年日本建築学会、
JIA日本建築家協会主催の国際会議に大いに興味を抱いた筆者が友人と参加した。厳寒の釧路市
に於いてPLEA1997年KUSHIRO国際会議が持続可能な社会の発展実現をテーマにCO2と温室
効果ガス排出による気候変動と温暖化防止を揚げ環境と建築の持続可能なデザインを掲げている。
サスティナブル・アクションを参加オプションで、降雪の札幌市内を主にJIA会員の設計者の案内で
複数の公共施設や住宅の実例を見学することができた。北海道の標語「試される北の大地」の冬季を
如何に快適に暮らすかのヒントを得たような気もし大変有意義なもので、現在でも岩手に冬が訪れる
厳寒時にその記憶を想い出すことがある。

 同年1997年京都議定書で先進国及び市場経済移行国の気候変動枠組み条約の締約国会議
COP3を開催している。年に一度、気候変動対策をめ世界各国から政府関係者、NGO、や若者代表
や先住民らが集まり、気候変動を止めるために国際的な目標や枠組みを決める。京都議定書1990
年比6種類の温室効果ガス総排出を基準2008年~2012に先進国全体で5%の削減目標を発効
している。

1979年省エネ法が制定さた我が国の産業部門は2013年度比2030年にエネルギ消費効率35%
を改善するための補助金の支援を行っている。改善発動した産業と運輸部門は引続き成果があるも
のの住宅等の民生部門の家庭部門の電気エネルギー消費量によるCO2多量な大排出量の悪循環
が続いている。

2020年10月、政府は2050年までに温室効果ガスの排出量を全体にゼロにする、カーボンニュート
ラルの目標を宣言しました。排出を全体としてゼロというのはCO2や温室効果ガスの排出量から、植林、
森林管理などによる吸収量を差し引て、合計をゼロにすることを意味します。そのためには、温室効果
ガスの排出量の削減並びに吸収作用の保全の強化が求められます。地球規模の気候変動問題に向
けて、2015年にパリ協定が採択され長期目標として、世界的な平均気温上昇を工業化以前(1850~
1900年)に比し(2℃目標)に保ち1.5Cに抑える努力する。実現に向けて120以上の国と地域が
2050年カーボンニュートラルのという目標を掲げている。
世界の平均気温は2020年で工業化以前に比べ、既に上昇している。近年国内外で様々な気象災害が
起きている。今後、豪雨や猛暑のリスクが更に高まることが予想される。世界と日本の温室効果ガスの
排出量は2019年は12億1200万トンで世界5位に多い国です。
2021年10月地球温暖化対策計画の改定により2030年に2013年比温室効果ガス46%の削減目
標に向け、住宅や建築物の省エネ基準の適合義務付け、イノベーション支援、100以上の脱炭素選考
地域の創出などの政策がある。

カーボンニュートラルの目標達成期間・・・・・2050年
 2013~2050年の37年間で前年度比約2.7%削減を毎年続ける計算、経産省では技術やコス
ト、 自然・社会制約等の面で多くの課題を乗り越える必要があると訴えています。

SDGsの目標達成期間・・・・・2030年
 2013年度比約46%削減
 達成を目指す17のゴールと169のターゲットで構成、目標達成の核となる政策は再生可能エネの導入
 を増やすこととエネ利用の効率化。2013年までに全発電量に占める再生エネの割合を22~24%を
 目標にしています。
 



これらの状況でより良い住環境を提供し長く住み続け、省エネや省資源に配慮されていれば周辺の環境
を大きく削減できる。
CASBEEーすまい(戸建)は住宅の総合的な環境性能を住いの環境品質(Q)と、すまいが外部に与える
環境負荷(L)に分けて評価する。

環境効率BEEの算定
BEE=Q/L                 

CASBEE戸建 初刊は2007年です,此れまで幾度かの開発を重ねていて今回が大きく変わっている。
待望してた2021年CASBEE SDGs対応の試行版をオンラインで受講の機会を得ることが出来た。数値
や表に裏付けされた結果を得ることで此れまでと異なる省エネ性能値EBIで建物と消
費する基準一次エネ消費量と設計一次エネ消費量(共に家電等のエネ消費量を除く)の比率。ZEH基準
やカーボンニュートラルのアクションの容量を求める際に寄与できユーザーとの大いなるコミュニケーシ
ョンに繋がる。
此れまでの通常版と比してどのように変化するのか楽しみであった。SDGs版と通常版にするのかの
変換が同じソフトで容易である。ソフト開発に担当した多くの 先生方の講義でアップグレードした数々
の実りある内容を理解し感謝を込め、十分では無いかも知れないが早速試みたのを今回の公開に
至っています。


CASBEE SDGs対応版
img140.jpg


BEEHによるランク評価結果
 ランク        評価             BEEH        ランク表示
  S     Exsellent    素晴らしい    BEEH=3.0以上    赤★★★★★
  

  
BEI.jpg


BEIとは、H28年エネルギー消費性能基準における基準一次エネルギー消費量と設計一次エネルギー
 消費量(共に家電等のエネルギー消費量を除く)の比率。

 BEI=C/A+C=51,373MJ/年 /115,935MJ+51,373MJ=0.3


重み係数

カーボンニュートラル記事はWeb 講談社ライツ・メディアビジネス局メディア開発局参照

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狭小敷地に建つ木造3階建て住宅

狭小敷地に建つ木造3階建て住宅

 立地条件 
                               施工:ABEKEN株式会社

盛岡市南部、大沢川原地内に計画された住宅は近隣商業、準防火地域の他市街地景観地域
の景観形成重点地域と河川景観保存地域に指定されている。
近くには市内の粗中心を南北に流れる中津川があり附近一帯がハザードマップによる床上浸水
区域に指定され両岸がカーブ状石積擁壁に遊歩道と多数の桜並木があり、女子校や市立中学
校が対岸に建ち並び景観的に優れた環境である。

計画敷地は川添より一通り離れた古い町並みの中にある狭あい前面道路に駐車場の余裕の
ない狭小敷地の既存2階住宅を解体し3階建て住宅の差し込み型である。

配置図

模型



計画の前提

馴染みの工務店からの紹介によるも大手ハウスメーカ-2社と3社コンペである。幸いにも採用
されることになった。此れまで既存木造2階住宅の1階の増築が10年以上経過して古く、部分の
解決では生活の機能・快適性に不便を強いられ特に温熱環境が満足できなくライフスタイルの
変化や社会的多様性に対し3階建案の要望。
それには幾つかの難点を解決しなければならなっかった。河川近くであるが故に大方の予想が
地盤状態が良いとは言え既存住宅を解体撤去し4.0m幅員満たす為の敷地測量図の作成依
頼。前者の地盤調査は既存建物の空いている道路側に2か所のサンプルをとり解体後に再調
査を行った結果次第で基礎設計が軟弱地盤か直接基礎かの指標とした。
計画段階時で準防火地域内の木造3階建て関連の法規制をクリアすることが重要である。

IMG_1212.jpg

IMG_1208.jpg


配置・平面計画

北側前面道路より5.5mセットバックし法緩和された敷地に南北軸を設定した通路幅を確保し
ながら北軸両側に駐車場を2台分を設け北側敷地の狭さから1台を奥に2階部の2,730mを
ピロティを当てた。使い勝手による玄関ホールから1階と2階に別々アクセスする。南軸線上は
居室群を中庭に向かい南面配置している。2階を生活の中心に据え、そこから1階または3階
主寝室、洋室への動線。中庭に面した2階LDKを中心に西側に個室を配しLDKの北側に洋室
を二間連続しLDKに広く長い繋がり展開できる。
キッチン以外の水回り部を一纏め3階ゾーンの利用し易い単純動線としている。1階は趣味と
来客用に用意した開放的なワンルームの大きな空間の中に簡素なキッチンコーナーがあり南
側の現在の倉庫は将来別用途として採光、排煙を確保した居室扱いである。

南側軸線端の庭は隣地建物三面に囲まれた中庭である。3階建てにより建蔽率の余裕が生まれ
北側空地を駐車場そして南側を中庭空間に利用する。以前より大きくなったプライベートな中庭
は住宅内部を通り抜ける通風経路、自然光、日照のダイレクトゲインとして機能する一方解放感を
呼び息抜き空間として各階の室内と融合した心地好いシースルーの空間を演出している。敷地の
形状から東西の隣家との外壁間が狭く法的に採光・通風が全く得られない状況である。南北軸に
沿った室内空間構成は中庭を介して生活に潤いを与える。以前にも増して広くなった魅力的な中
庭の整備を期待したい。

狭小敷地に建つ住宅は外皮断熱の性能に偏りがちで周辺環境を余り意識しない閉ざされた箱形
に終始しオープンスペース等が確保され難い。土地のポテンシャルを生かしたいものである。
この計画では50%以上の建物以外の空間利用は周辺環境を含めた住宅評価値を上げる
ことに繋がる。
意外にも3階主寝室より3方向で囲まれた隣地の外壁隙間からの屋根越に川の眺望が得られ、
中庭と中津川が繋がっている証しである。

IMG_1210.jpg


 木造3階建て準延焼防止建築物

H30年改正建築基準法により建築確認申請書、建築基準法61条の規定の適用により準防火
地域内の火災時に対応する木造建築物である。延焼ラインの屋根、外壁防火、軒天、開口部
その他の防火仕様規定が定めてある。また法第136条第2第二号ロに規定。また告示194号
第4号第一号イに規定する。
その他参考例:換気 第3種計画換気 MSデマンド換気システムの不燃排気ダクトを使用。

話は逸れるが筆者の予想で恐らく此れまでの大火で近年の例を挙げるとH28年12月新潟県
糸魚川市大火により延焼140棟をだした背景の教訓から火災に対する技術的水準や今後の
予防策から新たな施行に踏み切ったのではないかと思われる。

開口部を考慮する際、断熱・気密性能で苦労する。とりわけ寒冷地の省エネ窓はPVCサッシ
が主流でガラス性能がペア、トリプル(3重)があるが可能な限りライフサイクルコストバランス
の観点から後者の仕様を筆者は心がけている。
PVC防火窓は2階建て Type EC 準遮炎性能 3階建て Type EB遮炎性能に分別され大臣
認定を取得している。サッシメーカ-カタログはTypeEBの開口バリエーションを多くし2階建
の用途に対応できるようにし網入りクロスから網なし特殊ガラスの工夫、探求心は大いに歓迎
でき今回採用している。

様々な開閉機能を持つサッシを使用により合理的に使い分けることが必要である。隣地境界
の離れの小さい開口部特に1.0m未満には嵌殺しもしくは水回り0.2㎡の限定された開口部
や自動閉鎖機能装置もしくはシャッターのみの使用に限られる。しかも対象面(当該東西面)
に外壁の開口部制限の計算検討でS/K〈1 を満たさないとNGになるが開口部の大きさや個所
数により解決できる。更に壁面10m以上の場合は区切して要検討している。
制限の厳しい項目を一つ一つ解決することが求められ、始めて性能が確保される。

断面図

フアイヤーストップ、防火壁、防火天井

文字通り火の延焼を止める。火災が発生した場合自己及び周辺に縦横に火が広がる、この拡散
する火を抑制して大きな火災にならないように建物部位の工夫が求められる。
外壁の構造、床の構造、内壁と天井の仕上げ材の接合部、防火被覆の取合い部、目地の部分の
裏面の当て木当の構造とする。当て木当で取付け火気の侵入を防止し入念な施工を要する。
また、外壁回りの内部防火壁に設備器具を取り付けに(大臣認定)防火被覆装置コンセントボック
を取り付けている。照明器具の選定には防火面で気を遣うところである。可能な範囲で直付け器具
を選びそれ以外は埋込みである。天井内部に埋込み照明器具の火の侵入防止に二つの方法を取
り入れている。先ずベースライト用大き目の埋込み照明器具は開口補強をして二枚張りベース共
高気密SB器具をGW充填している。


性能計算

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リノベーション住宅を評価する

Casbee‐既存でリノベーション住宅を評価する。

既存住宅のリノベーションは部分的なリフォームとは事情が異なる。.一つはライフスタイルに合せた間取り
の変更を伴うことが多く見受けられる、このケースも例外ではない。規模的に現状の基礎や木構造を生か
しながら工事に発展する。構造上の変化を伴う内外壁張替は断熱改修を同時に行うメリットがある。更に
アメニティー(快適性)を求めてリフォームを超えた内容に至る。しかし既存利用は新築には及ばないがそ
れなりの魅力が多く存在することである。以上のことを鑑みて事務所の初となるCASBEE‐既存で評価し
た。条件次第で一つ一つの項目でランク的に満たない不十分な点は今後の課題としながらも住宅に纏わ
る総合評価を得てはじめて今後に繋がると信じて止まない。

CASBEE(建築環境総合性能評価システム)とは、建物を環境性能で評価し、格付けする手法である。
省エネや環境負荷の少ない資材の使用といった環境配慮はもとより、室内の快適性や景観の配慮で建
物の品質を総合的に「Sランク (素晴らしい」からAランク(大変良い)Bランク(やや劣る)Cランク
(劣る)の5段階の格付けが与えられる。
評価する対象のスケールに応じた建築系(住宅建築、一般建築)、都市・まちつくり系の評価ツールがあ
り総じてCASBEEファミリーと呼ぶがここではCASBEE‐既存(Tool-2)で評価する。
CASBEE‐既存は運用段階にある既存の建築物を対象とする評価ツールである。評価時点において
竣工後約1年以上の運用実績に依る仕様や性能を評価する。また資産として建物評価を行うものであ
り、ストック改修要否の判断に活用できる。
経年劣化・改善などで建物の環境性能が変化すると共に利用形態も変化するため評価結果は評価後
5年の有効期間とする。その後は必要に応じてその時点で再度評価する必要がある。

 BEE値によるランク

 ランク    評価
 S       Excelent     素晴らしい
 A       Very Good    大変良い
 B+      Good           良い
 B-       Fairly       やや劣る
 C       Poor         劣る
 

CASBEEの‐既存の評価対象


CASBEE‐既存は、既存建築物の「Q:環境品質」と「LR:環境負荷の低減性」を評価する。
新築・修繕・改修などを経た現時点での性能を評価する。即ち劣化や改善を含めた現在の性能を評価する。
尚既存の一部を再利用した新築(改築)や建替えはCASBEE‐新築の評価対象とする。

CASBEE‐既存の活用法として①環境ラベリングツールとして活用。②環境性能を表示するツールとして
活用。③施設管理の中期計画に活用。④不動産評価への活用。

評価結果                       
                           
img955.jpg

CASBEE評価結果
 ■建築物事体に関わる環境性能評価項目の結果欄である。スコアシートで集計された各採点
   項目の入力結果を基にグラフ表示される。

 2‐1 建築物の環境効率(BEE)
     Q(建築物の環境品質)とL(建築物の環境負荷)の評価結果から算出される「建築物の環境効
     率: BEE」 を 表示する。
    BEE=Q:建築物の環境品質/L:建築物の環境負荷=25×(SQ-1)/25×(5-SCR)

 2‐2 ライフサイクルCO2 (温暖化影響チャート)
   ・省エネ法の建築主の判断基準に相当する省エネ性能などを想定した標準的な建物 LCCO2
   ・評価対象建物の LCCO2:建築物の取り組み(エコマテリアルや建物の長寿命化、省エネなど
    の取組みを評価した結果。
   ・上記2行目以外のオンサイト手法(敷地内の太陽光発電など)を利用した結果
   ・上記+オフサイト手法(グリーン電力証書、カーボンクレゼットの購入など)を利用した結果

 2‐3 レーダーチャート
    一括して示され対象建築物における環境配慮の特徴が一目でわかるようになっている。

 2‐4 バーチャート
     Q (建築物の環境品質)は、表の上覧に「Q1室内環境」、「Q2サービス性能」、「Q3室外
       環境」 (敷地内)の分野ごとの評価結果が棒グラフで表示される。また、LR
      (建築物の環境負荷低減性) は表の下欄に、「LR1エネルギー」、「LR2資源・
       マテリアル」、「LR3敷地外環境」の評価 結果が一i様に表示。


 ライフサイクルCO2計算シート(戸建標準計算用)

R2・8乙部プロCO2計算

ライフサイクルCO2 とは

  住宅の地球環境に対する影響を評価するに、建設から解体するまでの住宅の一生(ライフサイクル)で
  評価することが重要である。現在最も重要視されているのが地球温暖化問題であり、温暖化ガスのCO2
  がどの位排出されるかという総量に換算して比べることが一般的である。CO2の排出量を住宅の一生で
  足し合わせたものを、住宅の「ライフサイクルCO2」と呼んでいる。
  住宅のtライフサイクルは、建設、居住、更新、解体・処分などに分けられ、その様々な段階で温暖
  化 に影響を与えるので、これらをトータルで評価しなければならない。
  実際に短期間で最も大きな影響を与えるのが建設時である。建設時のCO2排出量のほとんどは、
  建 材などの製造エネルギーである。鉄、コンクリートなどは莫大なエンエルギーを使って製造され
  ており、輸送や建設に使われるエネルギーよりはるかに大きい。一方で居住時に排出されるCO2
  の多くは毎日使う電気、ガス、上下水道などで1年単位で見ると建設時のそれとは比較にならない
  位小さい。ところが、ライフサイクルで見ると建設時よりも居住時のほうがはるかに大きくなる。例え
  ば30年寿命 の一般的な住宅では、居住時のCO2排出量が7割を占める。この割合は住宅の寿
  命が長くなればなるほど大きくなる。
   したがって、住宅ライフサイクルCO2を削減するには、居住時のエネルギー使用量を抑えることが
   先ずは最も重要となる。

 
               参考文献 CASBEE既存 評価マニアル(2010年版)Tool‐2
               編集:一般社団法人 日本サステナブル建築協会(JSBC)
               企画・発行:財団法人 建築環境・省エネルギー機構(IBEC)



乙部プロジェクト

耐震診断による現状調査

盛岡市南端の市街化調整区域内に位置する築60数年の住宅である。周辺は田畑、果汁栽培を営む農村風
景が見られ、この住宅は北上川を見下ろす南側斜面の一角に建っている。東西道路が敷地との高低差を生か
した庭園を通りその奥に大きな柿の木により母屋と作業小屋が程よく隔てられいるのに着付く。用途地域上
の問題から二度の増改築を行った家の耐震診断を行うための調査である。耐震結果の総合評価は劣化度の
低減係数0.7、上部構造は倒壊の可能性が高い0.28と算出、この数値は安全とされる1.0を大きく下回る。

配置図

リノベーション計画  専門分野のコラボレーション<
初期は専用農家で現在は代替わりし主に住宅設備会社を経営していることからライフスタイル変化し二度の
増改築ながら昔ながらの住環境生活である。耐震改修に留まらず今後の計画に向けて計画平面の纏まった
段階で専門分野が担当する。施主、アドバイザー、設計グループ(含む断熱協力者)、建築施工、電気設備
工事、機械設備工事(暖房・換気)で構成された。幾度も全体会議を経て工事費を提出して予算は絞られて
いった。予算の都合と利用頻度から一階和室を残し耐震整備とサッシを取替え、既存断熱の状態にする。
直上部の二階洋室は構造上の問題、不要等で撤去する。これは様々な立場の意見もあるがアドバイザーの
長土居氏の意見によると少子高齢化のより新築が減少リフォ-ム需要が増える中、多くのケースで家全体
の断熱化に限らず部分改築が今後の展開によっては需要が見込めるとの考えである。解体、機械設備、断
熱・気密、暖房、換気工事が発注者側により行われた例は少ない。会社挙げての意気込みが感じられ建築
施工者と一緒になり懸命に施工していたので今後の展開に期待したい。

コンセプト

現状生活を踏まえライフスタイルの変化に伴うように既存間取の活用性を見出し施主の要望を抽出し、より
良い生活の可能性を平面構成の中に見出すことである。それには新たな要求で既存の上部構造を支える
柱、梁の入替えは限定的であるが総合的判断が必要である。ここでは部屋間を繋ぐ廊下を廃止した結果、
壁と少ない建具で開放的でフレキシブルに使いこなせるようにしている。また東側和室二間を利用頻度に
応じた断熱改修しない限定ゾーンとしながら改修計画により開放的空間の二分化が特徴的である。
大きな社会構造の変化の中に、また時代の移り変わり程に人は変化できないのではないだろうか。人の感
性に語りかける空間も、それ程変わらないものであろう。
一、二階の断熱の区切りの良い二階を二間にしたので既存和室の屋根勾配を利用しながら深い軒の出で
新旧を連続させている。スロープを覆う屋根は既存高めの軒下に収め低いプロポーションを呈している。過
去の工事により軒高の異なる南西側屋根の緩い勾配に合わせ異なる二つの軒高を利用し軽快な屋根とし
て成功している。ガルバリューム鋼板の屋根と外壁縦張りとPVCトリプルサッシにスロープの小屋の木部現
わしは金属の冷たい雰囲気とは対象的で柔らかくホットな感触を醸しだしている。

既存を活用するこれらの手法は全く異なる空間を創る訳ではなくその地方や文化の中で住みエコロジー
のライフサイクルコストを保持し社会的にストックでき自然と人との調和を目指している。
その意味ではリフォームとは異なり地域の社会資産としてその中に長くストックできるものである。

この大きな住宅は明るくシンプルで開放的な断熱の特化した快適空間の中に基礎断熱と床下断熱の違い
や断熱ドアにより二分された温熱環境の比較そして古い懐かしさを体験することができる。見学に訪れる
人はその違いを肌で感じとり理解して頂くのに役立っているようである。

平面計画

既存は南入り広い玄関から続く奥まで長い廊下の田の字の間取で居室毎に建具で区切られていた。無
駄な通路を省き収納を確保し整理する。既存水回り間取を大幅に見直し一つのゾーンで使い勝手が良く
シンプルに収めている。そのため既存の異なる屋根が一つに母屋の屋根に収めている。LD+Kと水回り
の動線が良く玄関ホールからLとDに、ゲストルーム・ライブラリーその動線で主寝室そして和室へ更に2
階にスムーズアクセスができる。建具は最少限設置で開放的である。明るく開放的な空間を確保しながら
各々の居場所もまた個室に限らず用意されている。窓のサイズや位置は排煙と採光計算等の要因を満た
しながら決定している。玄関・ホールは外部からの延長として捉え天井と壁片面に杉羽目板を使用し人を
迎え入れている。LDは既存梁の曲げ強度を補強、下弦の木材を現わし目一杯の高さでただ広い天井に
アクセントを与えている。天高の統一と白い吸音仕上材で統一し窓際と所々に設置されている容量の小さ
いパネルヒーターは白い壁とフィットし自然である。

既存
      アプローチ側より見る既存全景

断面図-1 (2)
       断面図-1

断面図-1 (1)
      断面図-2


img931.jpg
      生まれ変わった全景

img932.jpg
 北東側より見る(後装備ソーラーパネル)           前面道路より垣根越の南面全景(後装備ソーラーパネル)


img933.jpg
 シンプルになった中廊下より玄関・ホールを見る。  居間から右奥はキッチン手前は食堂に続く。

img934.jpg
 採光と排煙を兼ねたトップライトが設置されているキッチン。    ゲストルーム隣接のライブラリーコーナー。

審査申請書

熱損失計算書

アンケート パス



共同発注方式による災害復興住宅

共同発注による災害復興住宅

大船渡市末崎町碁石地内に自力再建者に対して設計・施工の共同発注方式を提案した。建設委員会で中越地震での住宅復興事業を参考とした勉強会を行うものである。当初十七世帯のうち半数以上の九世帯が協同発注方式を希望していたが最終的に六世帯が同方式に参加し、共同建設組合(代表・大和田東江)を組織した。一方建築家グループは共同設計組織としてリアスの風の法人化(合同会社・LLC)を行った。大学研究室とリアスの風がコントラクション・マネージャの役割を果たし、大船渡市内の地域型復興住宅・生産者グループと連携して住宅建設の共同発注体制を確立した。これにより材料費をはじめとした建設費の節減と工期の短縮がある程度は実現できたように思われる。更に大船渡市行政の理解を得て大学研究室とリアスの風で作成したモデル住宅に近い戸建復興公営住宅六棟が建設された。中には低酸素住宅を意識した多家族用住居一棟が建築環境総合評価システム(CASBEE)基準のランク最上位Sクラス、担当設計者資料協力による中規模、小規模住居モデル一棟毎が建築環境総合評価システム基準、Aランクが建設された。共同発注形式に参加しない世帯や復興公営住宅に住む予定の世帯を含めて建設委員会が組織され建築や街並み形成に関し、建築まちづくり協定が締結された。
これにより住宅意匠と素材の統一が可能となった。その例として切妻による地域風土の瓦屋根、外壁の一定のカラー、地域木材の活用、境界から一定のセットバックと道路面緑被に地域樹木植樹等が揚げられ統一された街並みの形成が期待された。
個人の精神を賛える方法を探り、流行を求める代わりに伝統と風土に根ざした地域的な手法を発展させ、多様性と成長性を提示した。地域に根差し、環境に呼応する建築を追求する。
以上のようなWSの積み重ねにより、法定地区計画にも似た住宅地計画のためのルールつくりまでに至ることになった。

img812.jpg
住宅地入口に完成した戸建て復興公営住宅、 雁行配置された6戸を見る。

img809.jpg
当事務所が担当した7人家族のための住宅

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リアスの風メンバー 設計  田村 淳 の夫婦の家

img814.jpg
リアスの風メンバー 設計 伊藤 和則 の夫婦+子供2人のための家


住宅地づくりでのルールづくり

コミュニティを重視し地域に配慮した住宅地の建設とその後の維持管理を意識して、建設段階から住民組織の体制づくりが進められた。

建設委員会の規約
 防災事業を活用した碁石地区高所移転住宅地建設委員会の運営について。

建築及びまちづくり協定
 建築まちづくり計画の基本理念に基づいた住宅及びその他の建築物の建設や樹木の設備等に関するルールと、移住後の生活環境及び暮らしのマナーに関するルールからなる。

「抜粋」
建築及びまちづくり理念

第1条 「泊里地区防災集団促進事業」により大船渡市末崎町山根地内に建設される戸建て住宅地において、そこに移住予定の住民は、みんなで協議して提案した「碁石地区復興計画」に基づき、コミュニティを重視し、地域に配慮した住宅を建設し閑静な住宅地を形成していきます。形成された住環境を住民のつながりによって守っていきます。椿寿の浜里潮騒とともに生きる豊かな住環境を創造し守り育てることにより多様な世代がともに快適に暮らせるよう碁石地区高所移転住宅地にふさわしいまちづくりを進めます。

第9条 敷地内に住宅を配置する際には本建設委員会と相談しながら進めることで近隣の建築物への通風や採光、海への眺望、プライバシーへの配慮が確保できるように配慮します。

第11条 建築物の外壁又はこれに代わる柱の面から敷地境界線迄の距離(以下「外壁後退距離」という。)は隣地側及び道路側にあっては、2m以上を基準とします。

碁石高台住宅共同建設組合契約書
 戸建住宅を共同発注方式で建設する六世帯が組織した組合であり設計及び施工を共同で行うことを目的としたもの。
契約書での共同建設組合との基本設計契約のため、有志組織であった建築家集団「リアスの風」は有限責任事業組合を取得して設計業務に対応した。この「建築及びまちづくり協定」のルールを守りながら、個々の住宅の設計が進められた。設計・監理者としてリアスの風が個々で担当した住宅模型とそれ以外の模型も作成し住宅地の地形模型に配置し、協議会の場で其の様子を他の住民にも見てもらうことで、住宅地の完成イメージを確認しながら建設は勧められた。

高台移転復興住宅 ケース 7人家族
O邸 両親+夫婦+子供3人(長女・次女+長男)多家族住居は少人数家族に比べて床面積が大きくなるため道路山側の南面に位置する。小規模住居敷地と中規模以上住居敷地
は道路を挟み敷地の半分をずらすことで海への眺望が可能である。また前面が3%程度勾配に接道し雛壇状の敷地であるため東西が擁壁と法面で道路側は法面で構成されている。
接道から敷地は高い方のレベルでアプローチするので各造成地が高く設定されている。東西敷地境界の雛段状態に設けたコンクリート擁壁は道路に向かって垂直に交差すると道路側の法面に三角形状にコンクリート擁壁露出すると歩行時に危険で法面に平行にするよう市の担当者に要望し成功している。これにより視角がなく中規模住居は東南方向から小規模住居は北東方向からの人・車のアクセスがスムーズになった。

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スロープからアプローチする東入り玄関。

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道路出入り口から見る南東全景、将来に備えてスロープを設置。玄関右手に壁で隔てられた食堂の窓を見
る。南面する4個室上下階に寝室ブロック、北側に水回りを配し、LDKの一体的空間は平屋屋根下覆われ
た勾配天井よりなる開放的構成から海側の素晴らしい眺望を見渡せる。また Lと和室、主寝室の南面に
物干しスペースの前室を設けた回遊式動線が特長的だ。2階は子供用2室、片方は同性用の大きな子供室
にロフトを設けフリーにまた将来に向けて使いこなせるし街並み越しに広がる海への眺望も確保されている。


                   参考文献 BIOCITY NO.75 住宅池づくりでのルールつくり  
          


まちつくり復興支援その2

碁石復興支援-2(Goishi‐Support)

地域コミュニティはそこに住み続け人々の関係を維持することから始まる。大震災により一変したコミュニティの生活再建、コミュニティ再建を推進することが急務である。多くは被災した先での仮設住宅や見なし仮設住宅で暮らしの再生に取り組む住民のコミュニティ維持と一方では町外からネットワークで被災者の中に溶け込む努力をする人々もいる。また外部支援者が被災コミュニティに寄り添い行政と連携をとりながらより快適な移住環境を高所住宅地に構築して協働の成果が見えてきてる地域もある。

とりわけ2011年10月から災害復興まちつくり支援機構その後に遠野まごころネットの依頼を受けて建築・地域共生デザイン研究室(糸長浩司+藤沢直樹)が関わるようになった。支援機構(日弁連、技術士会、日本建築家協会等の災害支援チームに後者のエコロジカルな視点を加えた大学・研究機関が協働で住民参加型の計画づくりの支援をテーマにを活動を行った成果が見えてきている。         
災害を乗り越え災害復興体験ツアーを企画し広く国民に復興の姿を見てもらおうと努力する被災地域もある。これは長い復興・再生の途上にあることは確かであるしまちづくり構想は震災前のような歴史的生活の潤い、風景と比較するとまちづくり構想は全面的に実現しなく大震災は終結していない。 
                                 
復興まちづくり計画  第二次提言書
~椿寿の浜里づくりを目指して~
潮騒と共に生きる美しいまちを子々孫々!に
2016年2月提出

二次提言書では、住宅の高台移転や災害跡地利用計画の一次提案署を踏まえて地区の将来像を描いたものである。地域内の機運醸成を図り、市と協力し合いながら実現を目指すものである。「潮騒と共に生きる美しいまちを子々孫々!」と名付けられ、以下の三つが揚げられる。

Ⅰ 津浪被災跡地での生業や暮らしの再生に向けた跡地利用戦略
Ⅱ 跡地利用実現に向けた実地体制つくり
Ⅲ 景観や環境、新旧コミュニティに配慮し   
  た高台移転住宅地と再建づくり計画

被災跡地利用では、平泉中尊寺から蓮の株分けを復興農地にビオトープゾーン、地区のシンボルで天然記念物の三面椿がある熊野神社に面する道路沿いの「にぎわい創造ゾーン」(農産物や海産物加工や産直販売施設)、中世の館跡の西舘城址を歴史公園や避難場所とする「歴史ゾーン」、碁石浜を拠点とする「浜の暮し体験ゾーン」に位置付けている。更に避難路の整備、住民主体で取り組めるもの、行政の補助又は行政が主体となる項目に分類されている。
既に2017年から始まった碁石体験ツーリズムは、協議会下の実行組織の浜の停車場碁石プロジェクトチームが担っている。二日間の体験内容は①伝統的な「さっぱ船」で海側からリアス式海岸を巡る観光船遊覧、②景観や環境、新旧コミュニティに配慮した高台移転住宅地見学、③被災した地元住民による体験談と懇親会、④碁石浜を観光やエコツーリズム拠点とする浜の暮しの現地視察の防潮堤の整備などを含む)、⑤渋柿づくりの創作体験などである。

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地区のシンボル、天然記念物の三面椿

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 熊野神社   (津波当時は境内迄押し寄せ神社が床下浸水)

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  伝統式さっぱ船で海側からリアス式海岸を巡るモニターツアー

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  塩蔵加工された碁石わかめを手にするモニターツアー参加者

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地元有志企画で開催した観光モニターツアー、直後に開催されたツアー参加者を交えて浜野停車場 碁石プロジエクト会合   

高台移転住宅づくりでの合意形成

高所移転希望者は当初二三世帯であり、これが実現すると碁石地区内に新たな集落を形成することになる。移転希望者の震災前の暮しや住まい方を継承した。移転地での新しい住まい方、住宅地のあり様を探るべく、計画の段階に応じたアンケート調査とデザインワークショップ(以下WS)を大学研究室で継続的に実施。WSでは住民が理解し易いように再建後のイメージを喚起できる機会となるように模型や図面を使用することを試みている。

高所移転箇所は紆余曲折しながら協議会と大学研究室らで被災集落近くの高台に候補地を決めWSやアンケート調査結果から得た移転希望者の意向を踏まえ移転住宅地の構想案を作成した。当初、市が提案した住宅地構想案を変更した代替案を作成し合意を得た。それを基に、高所移転希望者を対象に代案案に対する評価や合意度合を探るため大学研究室でアンケートを実施した。対象者は高所移転希望者二三世帯(自力再建希望者一七、復興公営住宅希望者六であった。各世帯の住宅再建は宅地の植栽や境界の生垣設置ルール化などの環境、景観形成に係る項目は半数以上の合意が得られた一方住宅の形態については各世帯の状況の違いから半数以上の合意が得られなかった。しかし住宅建設を同じ設計事務所や建設業者に発注することは、被災者が一緒に移転できる点や材料費や設備等の削減による各世帯の負担減につながる点を理解した半数程度の合意が得られた。住宅意匠と素材が統一された街並み形成が期待された。

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まち並みを見る、景観ルールにより道路・敷地境界から2mのセットバックゾーンにシンボルツリー・植栽を用意、各戸に提供された雨水タンクが住戸の片隅に設置している。 

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  コミュニティー再生に向けた復興街びらき

2017年5月5日住民らにより「リアスの丘」と名付けられ、待ちに待った高所移転住宅地の待ちびらきのセレモニーが盛大に行われた。協議会の大和田東江代表、大船渡市長、高台土地を提供した人々、支援機構事務局の佐藤隆雄次長、研究室の糸長浩司、遠野まごころネットの千葉事務局長、「リアスの丘」の各世帯に屋号を揮毫した歌手の加藤登紀子さん、その屋号を織部焼の「屋号陶板」で製作した陶芸家の寺田康夫氏、「雨水タンク」を提供した日本建築学会雨水生活推進委員会のメンバーなど内外の関係者が一堂に会し碁石の復興とコミュニテイー再生を祈願した。

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糸長先生の幅広い交友関係の一人加藤登紀子さん奉仕活動、直筆による屋号を手にし喜ぶ住民、これを陶芸家寺田康夫氏奉仕に制作依頼する。

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加藤登紀子さん右側が陶芸家織部焼の寺田康夫氏

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テープカットに臨む左から大和田会長、大船渡市長、佐藤隆雄氏、糸長浩司氏

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 大和田会長から感謝状を授与する歌手の加藤登紀子さん

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 子供達による記念桜を植える


被災住民と支援者の協働で実に六年の歳月を経て建設された。リアスの丘は碁石のシンボル的な空間となっているし地域の新しい魅力として、また復興の姿を広く発信できるものであろう。しかしながら未だ多くの課題を抱えている。津波跡地の活用では、協議会からの提案は十分に実現されていない。跡地を再生活用した体験モニターリングツーリズムとして手探りで始まっている。今後も支援を引き続き行うことが必要である。

        参考文献  BIOCITY 2018 NO.75 特集 東日本大震災復興の光と影

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乙部プロジェクトその2

エコ・リフォーム ストック形成のための提案
Dot クオリティパス

本計画は古い既存住宅の耐震診断からスタートした。後の調査結果はいつ倒壊してもおかしくな
い内容であった。
改築するには法規制の難しい条件下であること。以前に増改築した経緯がある、できるだけ住み
ながら工事をしたい等の条件でエコリフォームの方法で一致した。住んでる既存間取りをどのよう
に利活用できるか、施主の詳しい要望等を抽出した事項を図面化し見積に精通している設計チー
ムの古川氏+施工者が作成した概算書を提出するが予算オーバーになり施工方法等を検討した。
当初は予算内に納めたいこともありDotプロジェクト級の設備を含めた温熱環境は想定外でした。
しかし折角大掛かりな工事を行うなら温熱環境をDot レベルにしながら現在の親子生活から次
世代の多様な生活の展開に対し住み続ける住宅の家にしたい。
ライフサイクルコストを考えれば初期のイニシャルコストに投資するのがランニングコストを抑え凡
そ20数年でペイできる判断の元で理解を得ている。
設備会社を経営してる都合上高性能設備機器の導入をすることで会社の宣伝効果が期待される
のでDot並みのレベルの外皮断熱計画をした。リフォームは新築時に比べて一般的にコスト高に
なることや、省エネ性能の確認が容易ではないなどの、様々な課題がある。それは人手間のかか
る作業が多い、その為に人件費を抑制するために様々なコストダウンを試みている。その一つは
施主側ができる作業と工務店の専門分野の作業に分けた。既存屋根、内外壁、床と床組等解体
工事を自社でまた外壁のGWの充填、一部床下、外壁と屋根断熱気密シート張りを更に機械設備、
換気設備、電気式輻射低温水暖房やエアコンを直営工事、電気工事もで施主側の直営である。
その結果若い社員、慣れない作業で日数を要したとはいえ経費削減と建築と設備業務の関連、
拡大そして育成に繋がっている。


既存建物を活用しエコリフォームすることはその地域の社会ストック形成のためであり耐震性や
耐久性のある材料、断熱・遮音などの基本的な物理性能を満たした快適性の向上、室内空気汚
染に注意を払いながら、良質な景観に寄与する必要がある。
またエコリフォームの実施により高い水準の省エネ性能が確保されたものが市場で適切に評価
され。ユーザーに選択されるような環境整備を図れることが大切である。

産業構造の変化に伴い生産活動も大きな影響を受けて住宅は量から質の時代のシフトが云われ
てから久しいが利便性、快適背に欠ける建築空間や歴史、文化性の美しさの乏しい都市景観が
支配する状況になっている。持続可能な社会において世代を超えて使い続けられるべき住宅に
価値観を見出したい。

Dotプロジエクトに申請に必要な基準はQ1レベルをクリアすることである。乙部プロジエクトを
申請するため最初に設計者がDotプロジェクトソフトで計算を行った。リフォームは新築の計算と
異なり計算に苦労した。たとえば基礎の断熱計算は一様に基礎断熱のみでなく床下断熱部も
存在すること、屋根断熱をすべてに適合させたが1階で階高が異なる2種類の高さがあるので
外壁断熱計算で難儀した。また、建物の性能基準が熱損失係数Q値からUA値に見直された
こともありDotプロジェクト内の審査委員にだけでなく外部の委託審査茨城県つくば市学園南の
㈱インテグラルのソフトホームズ君省エネ診断で比較検討し整合性を得ている。結果を踏まえ
更に厳密計算シートをDotプロジェクトで再審査した。このようにして評価を得て始めて認定プ
レート、クオリティパスを獲ることができた。
既存住宅のリフォ-ムが増加する中、新築住宅の超高性化住宅と変わらないレベルにできた
地方のストック資産の実例である。
これらは良き理解者である施主の決断の賜物である。住みながらの長い工事期間中は多大な
不便、更には工期の遅れもあり辛抱強く生活したことに敬意を表します。
またエネルギーアドバイザー長土居正弘氏、概算所作成した古川氏そして建築担当の島守女史
と安保棟梁たちに紙面を借りて心より感謝を申し上げます。


クオリティパス編集

Dot クオリティパス認定書



まちつくり復興支援

碁石復興支援(Goishi‐Support)

(有)佐川アトリエ設計事務所 佐川秀雄                                                                      
  
2011年3月11日 東日本に未曾有の大災害をもたらしたM9の地震と大津波、多くの犠牲者を出した大船渡はチリ津波から51年後に死者340人行方不明者79人の大惨事になった。「災害は忘れた頃にやってくる」と言い伝えられてきた警報を改めて認識しなければならない。多くの瓦礫が海に流出沈下した、陸地のそれは夜になると僅かな電灯の明かりだけで無残にも変わり果てた昼間の光景を闇が覆いつくし延々と海の方向に展開する光景を決して忘れることはできない。
         
 途方に暮れる女性達 - コピー

流された家のそばで途方に暮れる女性達
  
2011年5月~9月 JIA岩手地域会の三陸調査会8回(10人程度)に及ぶ参加は沿岸北部から南部に及ぶ沿岸部の被災状況の調査が目的であった。この期間に津波の猛威や軌跡から寄せ付けない人間の無力差を痛感した。しかしリアス式海岸の海沿いに暮す幾つかの集落に津波被害に遭わない有効な手段を見出だすことが出来る。海に面しながら高台の生活で身を守り自然と共存した集落は有機的で美しい景観を醸し出している。この調査を通し幾つかの失われた景観と生活者のために何らかの形で今後のまちづくり復興に役立てたいと考えていた。

災害復興まちづくり支援機構に構成員として参加

2011年10月 震災から8か月余り、災害復興まちづくり構成メンバーであるJIA本部からの要請で岩手地域会による派遣委員を推薦されたのは地元出身の適任者であるとのことだが自分が地元の一助になればと引き受けた。支援先は末崎町の西舘、泊里、碁石、三十刈、中根の集落境界が3地区公民館単位の住民らでつくる碁石地区復興まちづくり協議会(大和田東江会長)である。同協議会は住宅の高台移転や被災利用跡地を考えようと士業関係者等で組織する災害復興まちづくり支援機構や大学教授ら専門家の支援である。地元出身の縁が元で防災専門家の技術士佐藤隆雄氏を中心とした碁石地区の復興まちづくり支援機構Goishi‐Supportとして全幅の信頼と期待を担っていた。
しかし当時は津浪跡の生々しい中、月2回の会合は首都圏出身の専門家10人位で週末に限られ寝食に厳しいものがあった。会合に臨む前に東京検討会議を行っていた。
その都度の会員の経費の問題も取り上げられたが単年度毎に内閣府専門家派遣が認められ様になり此れまでの団体寄付依り支援金の提供だけから解放されるようになった。一方地区民の多くは応急仮設住宅での厳しい生活を強いられている。今後の生活再建が見えなく、方向性も定まらない中、支援機構の存在は心理的に望まれていた。自立再建住宅復興と公営住宅とのコミュニティ、防潮堤の位置と高さは近々の課題に挙げられそれに平行して避難路、後地利用、漁港整備、観光整備、生業、・・・等々、毎回の会合は住宅部会とまちつくりの二部構成で行うがコミセンに集まる住民の顔ぶれは限られて被災者意識に関係なく出席できない人のために協議会ニュースを発行し情報を共有できるように配慮している。また協議会開催に先立って1時間は専門家メンバーが住民の個別相談に応じ一定の効果を上げている。

防災集団高台移転計画
高台土地利用計画は日本大学生物資源科学部糸長研究室+藤沢研究室が中心となり計画、復興公営住宅は木造平屋建コミュニティ重視の住民の総意を尊重し住民代表と幾度も支援機構のメンバーと大学関係者と出向いたことで柔軟な姿勢が伺えるようになり、やがて市が主張していた二戸一を議会で覆すことに繋がる。
防集の敷地は100坪で定められている。大学の聞き取り調査やワークショップ(WS)で従来の住まい条件を把握して将来の具体的計画を抽出するために既存住宅を模型で表現し100坪の敷地でのスケール差を認識してもらった。
住民の合意形成が何よりも重要であるが五部落を一つの高台移転に纏まるまでに何が起こるかも分からない様な紆余屈折を経ている。
東西に走る750mの造成地で登り東側は要望により新たに計画された観光道に、西側下り道路は既存道路に夫々接続する。敷地高低差を南北に2段式造成地と東西に擁壁を伴い雛壇上に配置である。しかし造成工事が進まないとイメージが湧かないこと隣同士の個人の希望ベースもあるので区画割は住民側に委ねることになった。

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また良好な景観形成を醸成するには建築委員会規約を定め希望者には設計・建設を共同発注方式の提案があり以降検討していくことになった。その様な状況に中、JIA岩手地域会の有志、建築家支援集団(後のネイミング:リアスの風)が高台移転の住宅建設に加わる。既に聞き取り・WSで得た抽出データが用意されプロットタイプの低廉な住宅を目指したモデルプランを要求された。これを元にどの様な暮らし、どんな空間で実現するか具体的に住要求をWSスコアシートにまとめられた。
この頃の共同発注希望者は多数あったが高台辞退者や各々の事情から激変し後で分かるが自立再建11戸、共同発注6戸、復興公営住宅6戸のコミュニティよりなる。特記すべきは各戸から遠く海が見渡せるように大きい規模の住宅は山側小さい家は海側に配置する。眺望を妨げられないように道路を挟んで互いにズレた配置にする。また敷地境界からの離れを2.0m確保、緑被計画などの集団規定で統制を図るなど配置上の工夫が行われている。

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デザインWSの様子

敷地に模型を配置し海側への眺望の確認
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復興まちづくり計画 第一次提言書
~椿寿の浜里づくりを目指して~
2013年8月26日提出
2011年10月6日に専門家と共に、今後の住宅移転問題をはじめ、被災地跡の土地利用をどのようにすべきかなどにについて、専門家の支援を仰ぎつつ進めようと云うところから始まった。12月3日第1回碁石地区復興まちづくり協議会を開催し2013年8月25日まで21回に及ぶ協議会を開き話し合ってきた。第1回提言書は、その検討結果をまとめたものである。テーマ別に大きく分類すると
第1章 計画の対象地区と復興まちづくりの基本方針、 第2章 景観や環境、新旧コミュニティに配慮した高台移転住宅団地と再建住宅づくり計画、第3章 碁石地区復興まちづくり計画、第4章-1 気仙は一つ復興広域計画 気仙27城巡り=3・11大震災鎮魂の祈りコース、第4章-2 気仙は一つ復興広域計画 海と大地の悠久の歴史を巡る 太古から縄文、近世まで丸ごと案内ジオパーク
ジオパーク巡り 西コース(鍾乳洞と金山)。

 此れには単なる被災箇所の復旧だけでなく、これを機とした碁石地区全体の総合的な地域再生・活性化について話し合い、様々なアイデイアや将来イメージが描かれている。直接の被災者に限定される計画ではなく全体に関わることで高台移転が済めば御仕舞いと言うものではない。実現するにはそれに向けた精査活動は、一部の人の意見に依らず多くの住民参加による手順を経る手法が後戻りや頓挫を回避できる近年の傾向になってきている。それには地元の住人やゆかりのある皆の協力が無くては始まらない。
一方、提言書の内容を市側に精査してもらっている。協議会の話し合いを通し明確な公共性のあるは公費負担で、それ以外のものに公費で賄える仕組みにするには如何なる方法があるのかまた、優先順位を決めて行うことが実現できる最良の方法であることを話し合っている。これを第2回提言書に織り込みます。


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高所移転住宅地 建築まちつくり協定
2013年12月制定

【基本理念】皆で協議し提案した「碁石地区復興計画」に基づき、コミュニティを重視し、地域に配慮した住宅を建設し閉静な住宅地の形成をし、形成された住環境を住民の手で守っていく。共に生きる豊かな住環境を創造し守り育てることにより多様な世代が共に快適に暮らせるようにまちづくりを進めるものである。建物に直結する主なルールの抜粋は以下に示す。
【建築物等に関するルール】
・建築物の最高高さ10m以下・建築物の敷地の地盤面の変更・建築物の色彩・形態等。
・建築物の外壁後退は2m以上を基準とする。
【植栽・生垣】
・道路に面する場所(道路境界から2m以内)
 には高さ2.5m以上の樹木をシンボルツリーとして1本以上植樹する。連続性のある街並みを実現するために植栽に努め敷地境界等コンクリートブロック等を避け生垣植栽等を設置する。

共同発注方式による住宅つくり

2014年7月 戸建住宅を建設する6戸の住宅建設において、発注者側の誓約書として設計及び施工に関して共同で行うことを目的とし碁石地区高台住宅地戸建住宅建設組合(仮)契約を締結した。(内容略)
組合業務の委託先は共同発注に向けた体制作りした-設計組織のリアスの風LLP(有限責任事業組合)としている。以下の通り。(内容略)
1.共同発注住宅の進め方について
2.共同発注、施工者選定について
3.全体計画の進め方について
4.その他
5.今後の予定
終わりに市内の復興工事が方々で行われている。ここ碁石の高台移転の住宅工事も始まっている。まちつくり計画第二次提案書は2月12日提出されたがまちづくり計画は道半ばである。此れまで多くの人々の支援を紙面の都合上ご紹介できないが感謝の気持ちで一杯である。今後も支援続けることがご恩に報えることであると思います。


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乙部プロジェクト

耐震診断による現状調査

盛岡市南端の市街化調整区域内にある築60年以上の住宅である。周辺には農村風景が多く北上川を見下ろす南斜面の一画に建つ。東西接道が敷地との高低差を生かした庭園を通り玄関に至るとその奥に大きな柿木により母屋と作業小屋が程良く隔てられているのに気付く。用途地域上の建築制限があり此れまで2度の増改築を行った家の耐震診断を行うための調査でる。診断結果の総合評価は劣化度の低減係数0.7、上部構造は倒壊の可能性が高い0.28と算出、この数値は安全とされる1.0以上を大きく下回る。


リノベ計画の前提条件-1

地震による倒壊の危険性の大きい結果が出たので耐震改修を前提に現状生活に合った改修工事を行う。ここで既存間取りの説明をすると南入り玄関に中廊下を繋げ正面奥の階段がある田の字型平面である。平成4年の増改築は西寄りにLDK・キッチン、北側の廊下に水廻を配し寝室、和室に通じる。以前の増築は玄関の既存間仕切り壁に柱を付け加えた二重壁の構造的にはエクスパンション扱いである。屋根は既存の切妻屋根の下に南北夫々勾配を変えながら処理してあった。当時の建物と言えば断熱性に乏しく結露によって木材の腐朽が多いここでも例外ではなかった。

リノベ計画-2、専門分野のコラボレーション

計画平面の纏まった段階で専門分野が担当する。施主、アドバイザー、設計グループ(断熱協力者)、建築施工、電気設備工事、機械設備工事(暖房・換気含む)で構成された。幾度も全体会議を経ながら工事費を提出して予算は絞られていった。
予算の都合と利用頻度から和室二間を残し耐震壁補とサッシを取替え、既存断熱の状態にする。直上部の2階洋室は構造上の問題等で撤去する。これには様々な立場の意見もあるがアドバイザーの長土居氏によると小子高齢化により新築が減少リホーム需要が増える中、多くのケースで家全体の断熱化に限らず部分改修が今後の展開によっては需要が見込めるとの考えである。解体、機械設備、断熱・気密、暖房、換気工事が発注者側により行なわれた例は少ない、会社挙げての意気込みが感じられ建築施工者と一緒なって懸命に施工をしていたので今後の展開に期待したい。


コンセプト

現状生活を踏まえライフスタイルの変化に伴う様に既存間取りの活用性を見出し施主の要望を抽出し、より良い生活の可能性を平面構成の中に見出すことである。それは新たな要求で既存の上部構造を支える柱、梁の入替は限定的であるが総合的判断が必要である。ここでは部屋間を繋ぐ廊下を廃止した結果壁と少ない建具で開放的でフレキシブルに使いこなせる様にしている。また東側和室二間を断熱改修しない閉じたエリアと改修計画による開放的空間に分けている。

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Dot住宅 審査申請書 Format 2016.7.23
プロジェクト名(仮称) 乙部プロジエクト
1 申請者 佐川 秀雄
2 施主名 吉田廣身 温熱環境
3 家族構成 夫婦+息子=3人
4 設計者(設計会社) (有)佐川アトリエ設計事務所
5 施工者(施工会社) (有)山井建設
6 設備設計・施工者(設計・施工会社) 岩手日化サービス(株)
設計コンセプト・技術的工夫・・・自由な表現方法で。
□   写真 (外観:東西南北が判るもの)
□   配置図
□   立面図
□   矩計り図(断熱位置、種類、厚さ、サッシの詳細がわかる図面)
□ 入居者アンケート・・・別紙(Ⅰ年後の提出可) 光環境
□ 暖房設備図(熱源カタログコピー添付の事)
□ 換気設備図
□ 換気ユニット性能曲線が解るもの(カタログのコピーで可)
□ 給湯設備図(熱源カタログコピー添付の事)
□ 熱損失係数計算書(Dot プロジェクト様式) 空気・通風
□ 気密測定結果データシート 環境
□ 付近見取図
□ 基礎伏せ図

7 建設地 盛岡市乙部7-45-1他
8 建設期間  H28・8~H29・3
9 工法・・在来軸組み・2×4・その他  在来軸組
10 敷地面積 ㎡ 1768.02
11 建築面積 ㎡         146.91(199.57)
12 住宅面積 (延べ床面積) ㎡         186.21(240.89)
13 暖房・換気容積 ㎥ 460.92
14 熱損失係数 Q値 W/㎡K 0.9
15 総熱損失 W/K 163.02
16 部位 熱損失 屋根 W/K 17.13
17 外壁 W/K 27.55
18 階間部 W/K 8.65
19 土台 W/K 1.45
20 基礎 W/㎥K 38.89
21 開口部 W/K 44.69
22 換気 W/K 30.15
23 洩気回数 n/50p 0.53
24 相当延べ(計算上)床面積 ㎡ 186.21
25 すき間相当面積 C値 ㎠/㎡ 0.3
26 自然温度差 ℃ 8.93
27     予測 ・・・暖房用灯油消費量 L/年
28 予測 ・・暖房用灯油消費量 L/㎡・年
29 予測 電気エネルギー換 KW/㎡・年 20.05
30 暖房 設計室温 ℃ 21.3
31     性能コスト 604,000円/坪
32
33 断熱仕様 (必要に応じて 材質変更して下さい)
34                                     屋根 GWブローイング
35 外壁 Q1ボード61 +HGW105
36 階間部   Q1ボード61 +HGW105
37                                     土間床部  一部スタイロフォームAT75、HGW100+パフォームガード100
38                                   基礎 一部スタイロフォームAT75
39                                   開口部  PVC(トリプルシャノン)一部ペア
40 ドア 開口部 スエッドドア
41 天窓 開口部 ベルックス
42 換気方式 1種換気 日本スティーベルLWZ‐270Plus
43
44 方位別ガラス面積
45 南  ㎡ 19.86
46 東  ㎡ 3.98
47 西  ㎡ 4.06
48 北  ㎡ 7.96
49 天窓  ㎡ 0.76
50 玄関ドア  ㎡ 3.31
51 小計  ㎡ 39.93
52 単純開口率 21.44%
53 暖房エネルギー消費量(予測)          144.36 MJ/㎡
54 暖房熱源       電気式ヒートポンプ
55 暖房放熱器       低温水パネルヒーター

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img735 - コピー

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AFTER  PLAN

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BEFORE  PLAN


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before
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after
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IMG_3522 - コピ

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水害からの守りの家

水害から守る家つくり
「川沿いの家」

1916年8月30日太平洋上で迷走し不穏な動きをしていた台風10号が岩手県大船渡沖に上陸し特に
岩泉地方を中心に甚大な被害に見舞われたことは記憶に新しい。
当時のニュース速報によると過去に類の無い太平洋から直接の上陸経路で雨雲が下閉伊郡や宮古地方
を中心の上空にあり大量の雨に加え遅い速度が更に被害を大きくした。被害報告が次々に発表され明る
みになるが被害にあわれた方々には深く哀悼の意を申します。

大きな地震や台風による大水害等に見舞われてもその都度心配する事が無い様な設計内容であって自然
災害が何時どこから発生するか予測つかないこともあるの心掛けていることは細心の配慮である。筆者の
岩泉町内で担当した建物のケースを述べることで記憶に残したい想いからそれを通して何かしらの参考に
なればと考えました。

最初の頃の施主側との話では建物の被害状況は問題ないと云うので安心していたが10月9日、「1階
の壁に浸水した跡が残っていて床がでこぼこしている。」との連絡を得た。現地に行こうとするも国道
455号が台風被害の影響で通行止である、自分だけ行っても施工者とその協力業者が一緒でなくては改修
作業の方法を見出せないので道路の開通をしばし待つことにした。
施主にその間24h換気を強くするようにお願いした。その後ようやく道路が開通し皆の現地集合が9月
14日である。途中道路の至る所に川の氾濫で道路決壊、崖崩れ被害が多発している多くがすさまずい光景
の連続であり改めて水のエネルギーに驚愕する。一瞬何が起きたのがと現実に振り替えれば傷跡の危険
な場所もあるので所有時間は5割強要した。

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現地で話を聞くと敷地の南面の清水川が氾濫し清水川に架かる橋の桁下に流木が詰り橋の道路両側に
水が溢れた、そのために橋の川上と川下は水位の高低差が生じた。また清水川の南側には幅広の小本川
が氾濫している。平地からは低く大きな川であったが小本川の氾濫には驚きである。大量の水が清水川に
溢れ流れたのである。それ故清水川と小本川に囲まれた密集地は大被害に見舞われていた。二つの川は
町の商店街西側外れで清水川が本流の小本川と合流している。町の中心を流れ普段は流れの穏やかな
清水川は川辺の整備により憩いの環境を創り上げていたが川の氾濫により二階床上まで浸水し一階は
濁流の被害に遭い、ボランティア活動による泥出し作業が行われていた。また道路上には町職員らしき
人が消毒のための消石灰を撒いていた。小本川による
洪水被害は国道455号の沿い上流の安家地区から河口の小本地区の長い範囲に大被害は地区住民達
によるとこれ迄に経験したことのない大惨事をもたらしたという。

何故これ程の被害になったか、発生箇所の8割が岩泉町に集中している、専門家の調査によると、岩泉
町の山間部は岩盤が固く、元々保水力の低い表土層が短時間の豪雨により雨水を含み切れず、広範囲
で土石流や土砂崩れが発生したと分析している。

店街の施主側の駐車場には緊急災害対策派遣による青森県弘前市の水道部の方が給水活動を行って
いて施主側の差し入れの時思わず感謝の言葉をかけた。筆者も何らかの要望があれば大船渡市内の一
部災害復興支援を生かしたお手伝いの用意があるのだがいまのところその機会に巡り逢えていないので
内容により対応可能ですのでお声をかけて戴ければ幸甚です。

話を戻すと南側道路上約1.8 mの氾濫で住宅内に道路から50㎝の床上30足らずの浸水被害である。

住宅概要
商業地域 8/10 40/10→4×6/10=24/10
敷地面積 126.60㎡(49.8t)
住宅構造 1階鉄筋コンクリート+木造2階建 述床面積に車庫・物置41.0㎡を含む325.43㎡(98.4t)

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既に施主側で1階ゲストルーム用途の水を被った襖、障子、畳は処分していた。DKと和室の敷居はDK
のフロアの吸湿した膨張力により和室側に押され変形していた。DKのフロアは膨れ上がりデコボコ状態
である。床コンクリートの水や土砂はなく濁った水の形跡があった程度で壁に水位の跡が見られた。壁
仕上は石膏ボードに珪藻土塗である、一旦濁水に浸した壁であるがカビ発生の様子を見ることにした。
後でカビが生えきたのでボードを途中で張り替え基の珪藻土塗にした。
腰窓下に低温水輻射暖房 PS ヒーターが設置してたが和室の床部分の立上げパネルは床下地の変形
により一旦取外し床下地を取替えて使用するがパネル用配管ジョイントは再使用不可とのこと。

何れ施工者の改修見積提出を待つことになった。ここで断熱は全て外断熱である1階はスタイロフォーム
b3 t75、2階以上は壁・屋根フェノールフォームt65、壁は和室が主である理由があげられる。
1階のRC構造は敷地が崖地で擁壁を兼ねていながら水が幾分湧いていること、敷地が狭く1階分の高い
隣の敷地に和菓子工場の計画条件による。和菓子工場鉄骨2階一部地下述床面積324.78㎡着工
2001年11月、竣工2002年11月、住宅の着工2001年8月、竣工2002年4月である。
前者地下部倉庫に30㎝の浸水があり二重壁の石膏ボードを石膏防水ボードに張替えることにした。

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住宅1階部の鉄筋コンクリート部の浸水が少ない理由は木製断熱玄関ドア部以外の開閉できる開口部
がなくピロティ車庫に面するキッチン西側腰壁部にガラスブロックがあるが割れ難いのと道路南側和室
の腰窓に防犯用の手すり設置によりガラスが割れなかったこと他は小さな辷り出窓に起因する。
車庫奥の倉庫内に当時は深夜電力利用の大きな電気温水器を設置していたが水を被ると使えなくなり
エコキュートのお話をしてたので1,2階の浴室に対応できる容量にしている。

床に浸水した水が引いた理由は設備配管メンテナンス用のトラフの水抜によるものである。また外壁
の被害が皆無に等しいのは打込みした外断熱のスタイロフォームが水分給水しなく通気工法の木胴
縁を全ネジボルトで固定した上にデラクリートセメントボードを張り珪藻土仕上シルタッチEX+ディラ
トップ吹付によるものである。大雨による工場棟からの外部排水と崖の地下浸水を心配していたの
だが工場棟の屋外通路がマンホールに入る際の排水管の排水問題が幾分あり処理されている。

被害見舞いに行った序に住宅の24h換気システムエアロバーコ2台の清掃メンテを行ってきた。
建物の総合保険を掛けていると伺っていたので後に提出された改修工事費見積内容を確認した
後施工者が施主と工事契約し無事竣工にこぎつけた報告を受けている。

最後に今回の事例は順調に行った方であるが一方では残念ながらその様な結果にならない例も
あることを忘れてはならない。筆者が担当した川沿い住宅が東日本大震災により築5年の短い期
間で流失している。昭和八年の三陸大津波に逢い当時の高台移転の名残りで集団地と言われて
いる場所に建設したものだが昭和八年を基にした防災集団移転先は津波浸水区域外であるとする
住民の心のどこかにズレが有ったようである。つまり造成分譲する時にここまでは浸水しないと云う
安心があったと思われる風潮である。ところが八八年後に大津波が来襲している。世代を超えた出
来事である。何年か前にハザードマップ津波想定浸水範囲の看板が存在していたが何も起こらない
長い年月に危機意識が風化した結果表示板が機能していなかったのである。それと想定外の大津
波が重なり後手になった非難で多くの犠牲者が出た。

本題に戻れば今事例は基礎断熱をしている理由から床下換気を設けて無く床下から床上浸水を
免れた好例である。過去にも下水道の水が溢れた時、また近くの小川の氾濫に対し床下浸水の影
響を回避したことがある。基礎立上げ高は400であるが玄関の床が建具納めのため幾分少ないが
ポーチと玄関床と一般床の関係で調整できる。敷地の幾分低い危険な場所にあっては必要最小限
の掃出し開口部であってほしいと考えているし万が一床下土間部に浸水した時のことを考えて釜場
を設けるなどして早期に床下排水を促し床下に湿気が籠らないようにすることが重要である。

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プロフィール

佐川秀雄

Author:佐川秀雄

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